餅菓子とは
餅菓子は、餅米やうるち米などを材料として作られる和菓子のことです。餅米を蒸して餅状にしたものを、あんこや砂糖、きな粉など様々な材料と組み合わせて作られます。
また、わらび粉、葛粉などデンプンを主原料として作られる菓子も餅菓子のひとつです。
餅菓子は、日本古来から親しまれている伝統的な和菓子で、季節の行事や慶弔など様々な場面で食べられています。
振り返れば、何かと縁起物や季節の行事などで「〇〇餅」を食べているのではないでしょうか。
今回は意外と身近にありつつ奥が深い「餅菓子」について見ていきます。
餅菓子の原料
餅菓子の主な原料は、もち米やうるち米、葛やわらびなどのデンプンです。もち米やうるち米は、水に浸してから蒸し器で蒸します。蒸した米は、杵と臼でついたり、ミキサーで練ったりして、餅にします。葛やわらびは、粉に水を加えて溶いた後、鍋で煮て固めます。
餅菓子の製法
餅菓子の製法は、大きく分けて以下のようなものがあります。
餅であんを包むもの
餅で餡をつつんだ餅菓子といえば、大福、饅頭、柏餅、桜餅、うぐいす餅などがあります。中に餡を包むことを包餡するといい、餡を包む機械を包餡機と言うなど業界の間では一般的に使われている言葉です。餅は、白色やピンク色、緑色などに着色したり、小豆や黒豆などを混ぜたりして、色や味を変化させます。あんこは、小豆や白あん、栗や抹茶などを使って、甘さや風味を変えます。餅であんこを包んだ後、柏の葉や桜の葉などでくるんだり、きな粉や黒蜜などをかけたりします。
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餅を調味して食べるもの
餅を焼いたり炙ったり形を変えたりするなどして食べる餅菓子にはおはぎ、ぼたもち、あぶり餅、五平餅などがあります。餅は、丸めたり、平たくしたり、棒状にしたりして、形を変えます。餅には、あんこやきな粉、黒蜜、醤油、味噌などをつけたり、砂糖や塩などで味付けしたりします。餅は、そのまま食べたり、焼いたり、揚げたりして食べます。
餅を混ぜ物で練るもの
豆餅、粟餅、くるみ餅、わらび餅、葛餅など。餅は、小豆や粟、くるみなどを混ぜて練ります。他にも、丸めたり、切ったりして形を整えたり、あんこやきな粉、黒蜜などをかけたりします。
餅菓子の歴史
古代
餅菓子の歴史は古く、弥生時代にまで遡るとされています。当時、白い餅は白鳥になぞらえて神聖なものとされ、神様への供物やお祝いのしるしとして、人々に振る舞われました。また、餅は豊穣や健康、長寿などの象徴とされ、縁起の良い食べ物とされたそうです。
平安時代〜室町時代
その後、平安時代になると、貴族の間で餅菓子が食べられるようになり、室町時代には庶民の間にも広まりました。
餅菓子は、茶の湯や歌会などの雅な催しに欠かせないもので、季節や風情に合わせて、工夫や趣向を凝らして作られました。
江戸時代になると、砂糖やあんこなどの甘いものが手に入りやすくなったことで、多様化しました。餅菓子は、祭りや行事だけでなく、日常のおやつやおもてなしのものとして、人々に親しまれまれ、各地域で独自の特色や名物を生み出しました。特に、あんこを使った餅菓子は人気を集めたそうです。
明治時代以降
明治時代以降、西洋文化の影響を受け、新しい種類の餅菓子も開発されました。現在では、伝統的な餅菓子から現代的な餅菓子まで、様々な種類を楽しむことができます。餅菓子は、日本の美意識や文化を表現する芸術品としての一面もあります。
餅菓子の種類
大福:定番中の定番!あんこやフルーツの甘味を包み込む餅の幸せ
餅菓子といえば真っ先に思い浮かぶのが「大福」ではないでしょうか?柔らかく弾力のある餅皮で、こしあんやつぶあん、イチゴや栗などの餡子を包んだ定番の餅菓子です。近年の進化著しく、抹茶やチョコレート、チーズなど様々な餡子を使った大福も登場し、そのバリエーションはますます広がりを見せています。
大福の歴史
大福の起源は江戸時代初期まで遡り、当時は、一つ食べるだけで満腹になることから「大腹餅」や「腹太餅」と呼ばれていました。現在の形に近い大福が誕生したのは、江戸時代後期の文化年間と言われています。
大福は、冷蔵庫から出してすぐ食べるよりも、少し常温に戻してから食べる方が、餅皮が柔らかく、餡子の風味も引き立ちます。また、電子レンジで軽く温めると、餅皮がさらに柔らかく、餡子もよりとろっとした食感になります。
柏餅:端午の節句に欠かせない!新緑の香りを感じる餅菓子
端午の節句に食べる「柏餅」は、柏の葉で包んだ餅菓子です。端午の節句とは5月5日に子どもの誕生や成長を祝う行事のことで、現在ではこどもの日として知られています。餅の中にはこしあんやつぶあんが入っており、柏の葉の爽やかな香りが特徴です。柏の葉には魔除けの意味があるとされ、端午の節句に厄除けとして柏餅を食べる習慣が広まりました。
柏餅の歴史
柏の葉は古くから神聖な植物とされ、神に捧げる餅を柏の葉で包んだのが柏餅の始まりと言われています。柏の葉を包むようになったのは江戸時代だと言われており、柏の葉は、新しい葉が育つまでは古い葉が落ちないことから、「子孫繁栄」の縁起物として食べられていました。
その後、柏餅は参勤交代が行われる中で全国に広まって行ったそうです。
おはぎ:秋の味覚を満喫!五穀豊穣への感謝を込めた餅菓子
秋のお彼岸に食べる「おはぎ」は、もち米を丸めてあんこを包んだ餅菓子です。もち米とうるち米を混ぜたものもあります。あんこにはこしあんやつぶあん、白あん、きな粉など様々な種類があり、地域によって様々なバリエーションがあります。
おはぎの歴史
諸説ありますがおはぎの起源は江戸時代にまで遡り、1600年代後半に記された書物に、庶民の食べ物として日常的に食されていたという記述が残されています。
おはぎの名前の由来は、小豆の粒が萩の花の咲き乱れるさまに似ていることから、「萩の餅」と呼ばれるようになり、「おはぎ」となったというのが一般的な説です。当時は、秋の七草の一つである萩の花が咲く時期に、萩の花に見立てておはぎを作っていたと言われています。
明治時代以降、おはぎは様々な改良が加えられ、現在の形になりました。現在では、こしあんやつぶあん、白あん、ゴマあん、きなこなど、様々な種類の餡子を使ったおはぎが販売されています。
おはぎは、もち米の柔らかい食感とあんこの優しい甘さが特徴で、秋や春の訪れを感じさせてくれる和菓子です。古くから多くの人に愛されており、日本の伝統的な食文化の一つと言えるでしょう。
桜餅:春の訪れを告げる!桜の香りと優しい甘さ
春を感じる餅菓子といえば「桜餅」です。包餡したピンク色に着色されたもちを桜葉で包んだ桜にちなんだ和菓子です。桜餅には道明寺桜餅と長命寺桜餅の2種類があり、それぞれ異なる形状と味わいが楽しめます。
柏の葉は食べることはできませんが、桜餅を包んでいる桜葉は食べることができます。桜葉は何ヶ月も塩漬けすることで柔らかくなり食感が良くなります。塩漬けが甘いと軸が固くなり食感が損なわれるので塩漬けは大切な工程です。和菓子屋さんが使用する時にはもともと塩漬けされていた葉を水で塩を抜きますが、できあがった桜餅を食べると少ししょっぱさを感じます。
また、独特の香りがしますが、クマリンといわれる香り成分が原因で、食べ過ぎると体に良くないので過剰に桜葉を食べるのは避けましょう。
桜餅は発祥の違いで姿や食べられる地域が異なっています。
道明寺桜餅
道明寺桜餅は、桜の葉で包んだ関西風の桜餅です。道明寺は大阪に古くからある寺院で道明寺の発祥の地です。餅生地には道明寺粉と呼ばれる餅米を粗挽きにしたものが使われており、粒々とした食感が特徴です。
長命寺桜餅
長命寺桜餅は、小麦粉をベースとした生地でこしあんを包み、桜の葉で包んだ関東風の桜餅です。餅生地は薄く、桜の葉の香りがより強く感じられます。発祥の地である長命寺は東京都に古くからある寺院です。
桜餅の歴史
桜餅は、江戸時代初期に誕生したとされる和菓子です。起源は諸説ありますが、江戸の隅田川沿いに咲く桜の葉を利用して考案されたという説が有力です。
当時、大量に落ち葉となる桜の葉を有効活用できないかと考えた長命寺の山本新六が、塩漬けにした桜の葉で餅を包んだのが始まりと言われています。これが評判を呼び、江戸名物として広まりました。
その後、文化文政年間(1804~1830年)に徳川将軍家のお気に入りとなり、江戸の風物詩として全国に広まりました。桜餅は、春の訪れを告げる風物詩として、現在も多くのの人に愛されています。
ちまき:端午の節句に食べる!笹の香りが豊かな餅菓子
すでに紹介した「柏餅」と同じく端午の節句に食べる「ちまき」は、もち米を笹の葉で包んだ餅菓子です。地域によって柏餅を食べたり、ちまきを食べたりします。和菓子屋にはよく行くのですが、5月ごろ和菓子屋さんに行けば大抵どちらも扱っている印象です。
しかし、ちまきは「い草」で巻く分作るのが面倒なので、最近は出来合いの冷凍物が多く、和菓子屋さんでも1から手作りというのは少なくなっている気がします。
ちまきの歴史
ちまきの起源は、中国の楚国まで遡り、約2300年前の戦国時代に由来します。当時、屈原(くつげん)という政治家・詩人が国の腐敗に抗議して汨羅江(べきらこう)に身を投げた際、人々は彼の死を悼み、供養として竹筒に米を入れて江に沈めたのが始まりとされています。
その後、中国では端午の節句にちまきを食べる習慣が生まれ、日本へは奈良時代に遣唐使によって伝来しました。当時は、貴族の間で薬草を混ぜたちまきが厄除けとして食べられていました。
江戸時代になると、ちまきは庶民の間でも広く食べられるようになり、武士の携帯食としても利用されました。また、端午の節句には、ちまきを柏餅と一緒に供える風習が生まれました。
現在では、ちまきの具材も多様化し、こしあん、つぶあん、鶏肉、干し椎茸、たけのこなど、様々な種類のものがあります。また、地域によってちまきの形状や製法も異なり、様々なバリエーションを楽しむことができます。
ちまきは、端午の節句の風物詩として、古くから多くの人に愛されている伝統的な食文化の一つです。
草餅:春の訪れを告げる!よもぎの香り豊かな餅菓子
草餅は、よもぎなどの草を餅生地に練り込んで作られる和菓子です。春の季語として知られており、古くから親しまれています。
草餅は、地域によって様々な形状や味わいがあり、関東地方ではよもぎの香りが豊かな草餅が主流です。関西地方では、こしあんやつぶあん、白あんが入った草餅が人気です。
草餅の歴史
草餅の起源は平安時代まで遡り、当時は「蓬餅」と呼ばれていました。当時は、草の香りには邪気払い効果があると信じられており、草餅は厄除けとして食べられていました。
江戸時代になると、草餅は庶民の間でも広く食べられるようになり、春の行事食として定着しました。また、端午の節句には、ちまきと一緒に草餅を食べる風習も生まれました。
明治時代以降、草餅は様々な改良が加えられ、現在の形になりました。現在では、よもぎ以外にも、桜葉や抹茶などを練り込んだ草餅も販売されています。
草餅は、春の訪れを感じさせてくれる和菓子として、古くから多くの人に愛されています。
葛餅:夏の風物詩!つるんとした喉越しと優しい甘さ
夏に食べる「葛餅」は、葛粉を水で溶いて固めた餅菓子です。葛餅は、つるんとした喉越しと、優しい甘さが特徴です。葛といえば葛を凍らせた葛バーはシャリっとしながらもちっとした食感がが新しいと評判ですね。
葛餅の歴史
葛餅は、奈良時代から存在する歴史あるお菓子で、当時は貴族の間で珍重されていました。
葛餅の起源は、奈良県の吉野地方にあると言われています。吉野地方は良質な葛粉の産地として知られており、古くから葛を使って様々な料理や菓子が作られていました。今でも葛粉といえば吉野本葛などが有名です。
平安時代になると、葛餅は宮中行事でも用いられるようになり、貴族の間でさらに人気が高まりました。当時の葛餅は、現在のような透明なものではなく、白く濁った色をしていたと言われています。
江戸時代になると、葛餅は庶民の間でも食べられるようになり、夏の風物詩として定着しました。また、葛餅は薬効があると信じられており、暑気払いとして食べられていました。
明治時代以降、葛餅は様々な改良が加えられ、現在の形になりました。現在では、黒蜜やきな粉をかけて食べるのが一般的です。